track record実績
2024.11
「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」をパーパス(存在意義)に掲げる三菱食品株式会社のSCM統括(物流部門) 跡治様、佐藤様、コーポレートガバナンスグループ(BCP部門) 日野地様、林様にお話を伺いました。
Q御社の事業概要を教えてください。
弊社の主たる事業は、食品卸売業でございます。売上高は約2兆円、メーカー様より商品を仕入れ、小売業様に届けるという事業です。約6,500社の仕入先様より商品を仕入れ、約3,000社(16万店舗)の得意先様へお取引をさせていただいております。取り扱いカテゴリーは加工食品、低温食品、酒類、菓子とフルラインで取り扱っており、仕入先様、得意先様の課題解決を目的として新たな価値創造の実現に向けて取り組みを実施している会社でございます。
物流拠点は国内376拠点、海外17拠点。約400社の物流パートナー企業様に運用を委託しており、配送車両は1日平均約7,600台が稼働しております。多くの配送車両を稼働させていることから2024年問題も非常に意識しており、センターの横断的な汎用化や共同化を進めると共に、物流の効率化を図りながら持続的な体制を構築しております。
また、人手不足の観点からも働きやすい環境を構築するために、新テクノロジーの導入も積極的に進めております。このような事業への取り組みにより、サプライチェーン全体の効率化、最適化を図っていくのが弊社の物流部門でございます。
加えて、食品卸売事業以外にも力を入れております。ブランド開発事業では、生活者のニーズに即したブランドの構築、環境配慮型包材への切り替えなどサステナビリティに配慮した商品開発の推進を行っております。
また、データを活用したデジタルマーケティングによって食のビジネスにおける新しい付加価値を生み出し、既存の卸売事業以外にも新たに成長できる事業への取り組みを積極的に行っております。
弊社は本年「MS Vision 2030~つぎの100年へ、食が創造する未来へ、たすきをつなぐ~」という2030年度を最終年度とする経営計画を策定いたしました。
弊社グループは「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」というパーパスを掲げておりますが、国内人口の加速的な減少や地政学リスクの高まりなども踏まえて「サステナビリティ重点課題の同時解決」を新たにパーパスに追加いたしました。デジタル活用、新たな需要の獲得、人的資本強化に主眼をおいて成長戦略を加速させていくことをこのビジョンで表現しております。
また、2025年は弊社存続会社の設立からちょうど100年になるという意味でも「MS Vision 2030~つぎの100年へ、食が創造する未来へ、たすきをつなぐ~」というサブタイトル通り、本年を一区切りとして次のステージへ進んでまいります。
Q弊社は現在災害時・緊急時の燃料供給でお取引をさせていただいておりますが、ご契約を検討されたきっかけを教えてください。
2011年の東日本大震災の際に、燃料の出荷制限や国からの要請先への優先的な燃料供給などを目の当たりにし、有事の際の燃料確保が難しいことを実感いたしました。その後、首都直下地震や南海トラフ地震も含めて地震リスクが年々高まっていることもあり、燃料確保に向けた取り組みの検討を始めました。これが2018年頃になります。
有事の際でも食品を供給し続けることが弊社のミッションであり、社会的な責任も感じております。この使命感から可能な限り手を尽くす必要があり、平時から備えるべきとの判断により契約締結に至りました。本施策への取り組みは会社の体制整備だけではなく、企業価値の向上という観点にも大きく繋がったと思います。
Q東日本大震災の際は事業継続の為にどのような動きを行っていましたか。
親会社である三菱商事のネットワーク経由で燃料を確保できたこともあり、なんとか配送車両は稼働できました。被災をされた地域には安全第一で商品供給を行いました。
弊社の社会的責任から、少しでも早く復旧し、センターによっては別の場所に移転をして対応いたしました。類を見ない大規模な地震であったことから震源地の東北エリアだけではなく、離れている首都圏エリアでも地震の影響で複数のセンターが出荷できない状況に陥りました。
計画停電などにより電気が安定的に供給できず、物流パートナー企業様の燃料タンクも徐々に燃料が足りなくなるなど、燃料の確保が難しい状況でした。
Q今ご契約いただいている、軽油のEESS契約ですが、御社の中でどのようなシミュレーションでこの契約内容になったのでしょうか?
三和エナジー様は本州全域に加え、北海道及び九州に至るまで日本全国で燃料供給が可能なことが決め手でした。弊社は北海道から九州まで物流拠点を持っておりますので、エリア毎に給油場所となる拠点センターを決め、エリア全体に供給が回るような体制構築をシミュレーションいたしました。
Q契約を検討するにあたって苦労された点、エピソードなどを教えてください。
インタンク設置とEESS契約の両方を検討しましたが、インタンクは設置をしても燃料供給時には危険物取扱者が必要なため、全国の多くの拠点にインタンク設置と危険物取扱者を配置するのは現実的ではないと考えました。
そのような状況下、EESS契約を締結することで有事の際には実質インタンク設置と同様に燃料がタンクローリーで運ばれ、配送ドライバーの方に給油いただけることが決め手となり、契約締結に繋がりました。
Q御社は訓練を重要視されていると思いますが、訓練する上での目的や、苦労されていること、今後の課題や改良していきたいこと、給油訓練を1つのテーマとしてエピソードをお願いします。
弊社は物流を担っているため実際に有事の際に緊急で動けるかが重要であり、本訓練を非常に重要視しております。定期的な訓練はセンターにタンクローリーと配送車両を準備した上で、実際の給油まで実施しております。加えて、今後は様々な条件もシミュレーションしながら訓練を継続していくことが重要だと思います。
然しながら、定期的に訓練を実施していても、2月の停電トラブルが起きた際にはどう対応すべきか難しかったのが事実です。今後も定期的な訓練は継続しつつも、加えて緊急的な訓練も実施していくことで、有事の際の実効性向上に繋がると思います。
―一部の方だけが把握をしておいて、朝急遽訓練やりますとなったときに職員が動けるかどうかという部分ですね。
弊社のセンターには365日稼働している場所もあります。責任者が常時現場にいるわけではないため、責任者不在時でも対応できるかが重要であり、その部分も訓練として準備していくことで有事の際に誰でも迅速な対応が可能な状態にしていきたいです。
Q今年の2月の停電トラブル時に初めて緊急の要請をいただき、給油をさせていただきましたが、弊社のサービスレベルについて印象などはありましたか?
2月の停電トラブルは弊社のセンターで増設工事を行っており、地下に埋まっている電気ケーブルの損傷により停電してしまいました。迅速な対応により、冷凍食品の品質維持やサーバーへの電源供給ができたことで、センターも問題なく稼働できたと現場から聞いております。定期的に訓練は実施していましたが、実際の緊急要請時にも訓練同様に迅速に燃料を運んでいただけたので大変助かりました。
担当営業の方に連絡してから数時間で対応していただき、非常に感謝しています。
Q担当営業について
迅速に対応いただいていますし、前営業担当の方からすべて引き継いでいただいているため本当に感謝しています。
Q今後弊社グループに対して求めることを教えてください。
今回初めて緊急要請の実績ができたことで、大きな安心感に繋がりました。然しながら、大規模災害時には弊社だけではなく様々な契約先に燃料を運ばなければならないためその中での優先順位、加えてタンクローリーから配送車両に給油する際のタンクローリーの確保時間なども訓練時に確認させてもらいたいです。
―今の契約の内容の深堀といった部分ですね。
貴重なお話ありがとうございます。
編集後記
今回は三菱食品株式会社の跡治様、佐藤様、日野地様、林様にお話を伺いました。
「食」を届けるという使命に向かって、大規模災害時においても、変わらぬ想いで本気で取り組まれている姿勢に感銘を受けるとともに、弊社としてもその一端を担うパートナーとして、誇りと責任を再認識することができました。
三菱食品株式会社様 跡治様、佐藤様、日野地様、林様、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。